このように、ビジネス環境は今後ますます複雑になっていきます。そしてこの複雑化する流れは、変わることなく進んでいきます。一旦進みだしたビジネスの国際化が逆戻りすることは、企業が成長し続けていくためのオプションを減らすことにつながります。常識的に考えて、そうなることはありえないでしょう。これが今の、そしてこれから我々がますます深い関係を持つことになる国際化、グローバリゼーションという言葉が持つ本当の意味なのです。
10.4. 改めてこれからのステップを考える
上のグローバリゼーションの本当の意味を踏まえ、この本のタイトルである「仕事英語を身につける」ことが、そしてこの本でご紹介しました英語でビジネスコミュニケーションをとる際の手段や心構えが、今後の我々にとって、そして日本という国にとってどういう意味を持つのかを、改めてご理解いただけましたでしょうか。ビジネスの国際化の進展によって仕事環境の複雑化していく中で、こうした状況に対応できるビジネスコミュニケーションのスキルを身につけることが、「仕事英語を身につける」ことなのです。単に英語の語学力をアップさせることだけではないことは、お分かり頂けたのではないかと思います。
これからの日本の経済の在り方を考えますと、経済を継続的に発展させていくには、あらゆる方面でビジネスの国際化を進めていくことが必須条件になることは、間違いないでしょう。日々複雑化し続けているグローバリゼーションの流れに今よりも大きく身を委ねることは、当然それに伴うリスクも大きくなります。しかし日本の人口が突然爆発的に増加しだしたり、財政赤字が突然解消したりするような、全く想定外の変化が起こらない限り、この国の経済を継続的に成長させる道は他にないのではないでしょうか。
上に記した内容がこれからの日本経済が進む方向であるならば、日本の企業が提供する製品やサービスを今よりももっと多くの人々に提供していくための環境を整えなければなりません。それと同時に、まだ日本には提供されていない海外からの製品やサービスを国内に導入しやすい環境も合わせて整えていかなければなりません。これを実現するには、日本の政治、経済を含めた仕組みを見直し、阻害する要因を無くしていくことが必要となってくるでしょう。しかし、仮にそうした環境が整ったとしても、それだけでは不十分です。
ビジネスを動かすのはあくまでも人です。人がいなければ、何も起こりません。つまり、これからの経済を発展させていくには、国際化されたビジネス環境の中で、十分機能できるだけのスキルを持ったビジネスマン・ビジネスウーマンが、数多くいなければなりません。どんなにすばらしい道具や環境を整えても、それを使える人が存在しなければ何の意味もありません。実際にアクションをとり活動を展開できる人たちがいなければ、何も起こらないのは言うまでもありません。
この本で紹介した「仕事英語を身につける」ことを、ある特定の組織や人たちだけでなく、日本の大・中・小企業の全てを含めたビジネス界全体で推し進めなければ、この国の未来は本当に限られたものになってしまうでしょう。 事業の国際化は、「選択」(choice)の時代から「必然」(necessity)の時代に切り替わっているのです。
最後にこの章の冒頭でお伝えしましたことを、もう一度お伝えし、終わりにしたいと思います。「仕事英語を身につける」に至った近い将来のみなさんが、これからの日本経済の発展に大きな役割を担い、活躍されることを期待しています。
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この本で紹介した内容は、英語で行うビジネスコミュニケーションの質を上げるために必要な知識、手段、そして心構えです。ここで紹介したこと以外にも行えることや、とることができる手段は数多くありますが、少なくともこれだけは必要だと思うものを紹介しました。この本は、国際化が進み、英語がますます必要となるビジネス環境において、海外のカウンターパートとの仕事を効果的に進める上で最低限必要な事柄をまとめた本、という位置づけになります。
ここで紹介した内容を理解して仕事の中で活用できるようになった方は、ビジネスコミュニケーションの質を上げるために必要なスキルの核(コア)となる部分が身についたことになります。このコアを作ることが、これから本当の意味で「仕事英語を身につける」ための最初のステップとなるのです。
従いまして、今はまだ、「仕事英語を身につける」プロセスの途中であると認識して頂ければよいと思います。これがこの本をここまで読み終えた時点での、現在地となります。この本一冊で全てが完結しないことを、ご理解ください。
ここからは、次のステップに進んでいくことになります。次のステップとは、この本の内容を基に築いたコアを発展させることが目標になります。このステップでは、一人一人が自分に最も合うスタイルを見つけると同時に、そのスタイルがビジネスコミュニケーションにおいて効果を発揮するようになることを目標にしなければなりません。予めお伝えしておきますが、このステップにおいては特に決まった手順やマニュアルは存在しません。自分に合ったスタイルを見つけられるのは、自分以外には誰もいません。第三者に教えられて得られるものではないのです。
コアを発展させるために行う英語スタイルを確立と、効果的なコミュニケーションの実現とを両立させることは、簡単にクリアできるステップではありません。長い時間がかかるかもしれませんが、焦らずに取り組んでいきましょう。このプロセスは科学ではありませんが、クリアするためには科学の実験のように色々なスタイルを試し、「トライアル・アンド・エラー」(試行錯誤)を積み重ねながら、自分にしっくりくるスタイルを見つけることが一番の近道になると思います。失敗を恐れず色々試してみることが、最大のアドバイスとなります。時には行うこと全てが上手くいくと思うときもあるでしょうし、反対に何をやってもダメと思うときもあるでしょう。どんな状況になったとしても、この本で培ったコアの部分は、常に有効であり続けます。進む道は平たんではないですが、立ち止まることなく、諦めることなく、前に進んでいくことが大事です。
(終わり)