第6章 仕事英語を身につける 1 【5/8】

情報を確実に相手に伝える手段

 

 ルール4:視覚的に分かりやすくする

 

 当たり前のことですが、伝える情報を文書にして伝える際、受け取る側は記載された内容を読むことによって理解します。読むという行為は当然目を使うことになりますので、ルール3の「シンプルな表現」を使った文書の構成を心掛けるのと同時に、視覚的に見やすく、読みやすくしていくことも重要です。例えば複数の条件を並べる際は文章を箇条書きやリスト化する、重要なことを伝えるときは字体を変える、または改行の仕方を工夫するなど、策は色々あります。下の2つの分例を使って、視覚的に分かりやすくするとはどういうことかをもう少し具体的に見てみましょう。

 

   (例1)

   Please provide the following details on your product: unit price,

   size, weight, color variations currently available, and quantities

   currently available for each color. Please provide your inputs by

   5PM tomorrow.

 

   (例2)

   Please provide the following details on your product:

     1. Unit price

     2. Size

     3. Weight

     4. Color variations currently available, and

     5. Quantities currently available for each color

 

   Please provide your inputs by 5PM tomorrow.

 

 上の例1と例2は全く同じ文章です。どちらもある製品の価格や大きさ、そして現存の在庫品の色と数量に関する情報の提供を依頼しているものです。例1と例2では、視覚的にどちらが分かりやすいと思いますか。そしてどちらのほうが、希望した期限内に抜け漏れなく先方から情報が得られる可能性が高いと思いますか。この情報を受け取る立場になって考えてみますと、例2のスタイルのほうが理解しやすいと言えるのではないでしょうか。

 

 伝える情報を文書にする場合、情報の中身だけでなく文書の構成のされ方など、相手に与える視覚的な印象も情報の伝わり具合を左右することがありますので、十分気を付ける必要があります。

 

 ルール5:「日本語英語」は使わない

 

 ノン・ネイティブスピーカーである以上、自分が発信する情報は、第3章で紹介した「外国英語の障害」を引き起こすことになりかねないことを、常に認識しておく必要があります。「外国英語の障害」がもたらす最も主たる問題は、情報を伝える側と受け取る側との間で認識のずれが出てしまうことです。つまり、伝える側が「伝えた」と思っていた内容が、受け取る側には「外国英語」が理解できず実際には「伝わっていない」状態になることです。

 

 我々日本人は、英語で伝える情報については、まず日本語で内容を考えてから(もしくは会議などで日本語を使って話し合い、伝える情報を決めてから)それを英語に訳すプロセスを踏みます。(常に英語しか使わない環境にいる人はこれには当てはまらないでしょうが、日本国内で仕事をする人で、そういった環境にいる人は稀なのではないでしょうか。)これまで紹介しましたルール1から4を守ることによって、「日本語英語の障害」はかなり解消されていきますが、伝える情報を構成する際は、日本人にしか通用しない言葉を使っていないかをチェックすることを習慣化しましょう。

 

 【注】日本語独特の言い回しもさることながら、普段何気なく使ってい

    るカタカナ用語にも注意が必要です。

    ■ サラリーマン  →  business person

    ■ アンケート →  questionnaire

    ■ フリーダイアル  →  toll free

    ■ プレハブ  →  prefabricated

    ■ ペーパーカンパニー  →  dummy company

    ■ マスコミ  →  media

    ■ ミス(失敗) →  a mistake

    ■ ラフ(服装)  →  casual

 

 この他にも「~をフォローする」ことをそのまま「follow ~」と表現すると、「~について行く」という意味になってしまうなど、カタカナ英語と実際の英語の使われ方が異なるケースがありますので、注意が必要です。(「~をフォローする」という場合は「to follow up ~」となります。)

 

 ルール6:築いたセルフ・ポジショニングを崩さない

 

 このルールに関しては、前の第5章でお話ししたことですので、多くを説明する必要はないでしょう。セルフ・ポジショニングは、コミュニケーションをとる相手が自分に対して抱く不信感や警戒心を解くために築くものです。自分が「予測可能な存在」になることがキーポイントです。警戒心を解くためのセルフ・ポジショニングに一貫性がなくなってしまうと、相手が抱く警戒心はますます大きくなってしまいます。強く警戒している相手から発信された情報が、意図したように伝わらなくなってしまう状況を想像するのは、それ程難しくないことだと思います。

 

 毎日行う仕事なのですから、いつも順風満帆で人間関係がスムースであり続けることはありません。社内外からプレッシャーを受けたり、精神的に不安定になってしまったりすることもあるでしょう。海外の人とのコミュニケーションで大切なのは、仕事の進展状況や自身が持つ感情に左右されないように注意しながら、自分に一番合ったセルフ・ポジショニングを築き上げていくことです。

 

 

  

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